香川県坂出市のパート従業員と孫姉妹の遺体が見つかった事件をめぐり、みのもんた、および「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)スタッフが姉妹の両親に謝罪したことを24日発売の週刊誌『週刊文春』が報じている。
同誌によれば、みのは11日、情報番組制作局長らとともに両親と対面。同事件について、みのが番組内で父親を犯人扱いする言動があっただけでなく、TBSも「苦情が来ているかも含めて、こちらが公表することではない」と紋切り型の対応を取り、父親側がTBSの取材を拒否するなどトラブルになっていた。
もっとも、同局広報部は、「夫妻と会ったのは謝罪のためではなく、初公判を前に心境をお聞きするためのもの。ご心労をおかけしたという気持ちはあった。至らない点があれば、改めておわびしたい」としている。
この事件では、タレントの星野奈津子が「あれは絶対父親の仕業だよ!」と書き込んだ自身のブログが炎上。所属事務所のジールアソシエイツは、星野の今後1年間の活動自粛を発表した。
この女性タレントがそう勘ぐるように、テレビは「父親で決定」といわんばかりの映し方で、素材集めに懸命だった。
メディア側の言い分がなんであれ、その報道の仕方自体に問題があり、何より別の真犯人が出た以上、これは松本サリン事件に匹敵する、マスコミによる許されざる悪意の失錯と言わざるを得ない。いずれにしても報道被害は明白であり、潔く謝罪し、反省するのは当然だ。
とくに、今回謝罪したとされる、みのもんたとTBSの過ちは今回が初めてではない。そこには、たんなる失言・放言ではなく、叩きやすいところを叩く弱い者いじめの枠内の「毒舌」とKYぶりが窺える。
2005年6月6日の同番組でみのは、「ビール酵母は免疫力を上げる」から「必ず朝、ビールとトマトジュースを混ぜてクーッと飲んでいる」などと自らの「健康法」を披露。その上で、「皆さん、ビオフェルミンなんてお飲みになってるじゃないですか。胃腸薬。だったらビールを飲んだ方がいいくらい」などと、実在する商品まで引き立て役にした。ところが、ビオフェルミン製薬は同番組のスポンサーだった。同社は翌日、スポンサーを降りている。
2006年3月24日には、北朝鮮による拉致事件を報道した。みのは、「事ここまできましたらね、在日の北朝鮮系の人たち、日本でこれからも子供を育てたり、孫を育てたりしたいんならば、日本で正当にね、生活できるように、自浄作用をおこすべきでしょう、あなた方が」などとまくしたてた。
拉致問題が取り上げられている中で、国民の義憤に合わせた「怒ってみせる」+「言い切り」で、みのとしては『してやったり』だったろう。が、「テレビで北朝鮮の内情について語っても激しい抗議はほとんどない」(『週刊新潮』同年4月13日号で山梨学院大教授・宮塚利雄)からこそ言えたのであり、「かつての総連の活動は熾烈そのもの」(同号で元公安調査庁調査第二部長・菅沼弘光)だった頃なら、はたしてそんな強気のコメントができたのか。だいたい、北朝鮮の指導者や総連、さらに日朝関係をダークなものにしてきた政治家などを第一義的に批判するのではなく、一般人(しかも本国に住んでいない在日)を責め立てるというのは弱いモノいじめ以外の何物でもないだろう。
2007年の1月22日には、不二家平塚工場の元パート従業員の女性の証言から、同社が「賞味期限切れのチョコレートを再利用していた」と断定。みのもんたは例によって、鬼の首でも取ったように「廃業しろ」などと居丈高に説教した。これに対して、法学者などで構成する不二家信頼回復対策会議が「事実と異なる」と抗議。
すると、番組は4月18日の放送で局アナの柴田秀一が、誰のどの発言と特定することなく「誤解を招きかねない表現があった」と「いきすぎた表現」のみを形式的に謝罪。4月25日に定例記者会見を行ったTBS社長の井上弘に至っては、「TBSをバッシング風に取り上げるのはおかしい」とコメントして傷口を広げた。
その結果、8月7日に「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の「放送倫理検証委員会」がこの問題を取り上げ、「放送倫理上、問題があった」などとし、そのお詫び放送についても「主語や範囲が曖昧」「訂正・お詫びまでの時日がかかりすぎている」などとする見解を発表している。
いずれにしても、有名人や人気番組だからといって、私たち視聴者は決してその情報を鵜呑みにしてはならない。うわべのセンセーショナリズムに騙されず、その批判者の論旨を読み解き、できるならばその発言者の立場や過去の発言歴、背景などもきちんとチェックすることだ。
「報道番組」のキャスターだのMCだのといったところで、彼らもやはり飯を食うためにやっている。何が正しいかではなく、何が自分に有利かという判断でモノを言っていると疑おう。だから、みのもんたを見てもわかるように、この人たちからの批判は「叩きやすいものを叩く」ことしかできないようにしか思えない。
叩いたものが悪なら、その限りでは間違いではない。しかし、その陰に隠れている「別の悪いもの」「もっと悪いもの」などを見逃したり免罪したりすることもある。少なくとも、何かをスケープゴートにして叩くことで、その事件の全体像をとらえることができなくなる可能性がある。そんな役割をこの人たちは、意図や自覚にかかわらず果たしているのだということを常に覚えておく必要がある。
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